【書評】体育館の殺人

書評

平成のエラリークイーンとの呼び声が高い、青崎勇吾のデビュー作。

「トリックなんて添え物だよ」と、

言わんばかりの現在の国産ミステリの風潮に、

真正面から立ち向かった、純粋なミステリー小説に仕上がっている。

書評などやったこともないけど、

この小説に倣って、僕も書評に立ち向かってみよう。

書評に当たって、

【人物造形】【ストーリー構成】【トリック】

の三点に絞って評してみよう。

【人物造形】

ホームズ役:裏染天馬 (うらぞめてんま)

学校一の天才でアニメオタク。

キャラ付けの決定的な要素は【学校に住み着いている】という点だろう。

学校に住み着くアニメオタクの天才が、殺人事件の謎を解くという、

まるでラノベか、という設定だが作者が、昔ライトノベル作家を

志望していたと聞いて、納得した。

ワトソン役:袴田柚乃(はかまだゆの)

卓球部部員。

天馬君の助手役として、校内を四方八方を駆け回る。

兄が警視庁の捜査官。

【ストーリー構成】

目次をめくると、登場人物紹介、

そして、事件の舞台である体育館と校内マップが描かれたページから始まる。

探偵はこの人です。

助手はこの人です。

犯人候補はこれだけいます、といわんばかり。

そして、

これから起こる事件の現場は、こうなっています。

このマップで、トリックを解きます。

という内容だ。

いいなぁ。これぞ本格ミステリ。

ミステリマニアでもなんでもないけど、

やっぱりミステリー小説というのは、

作者から、読者への挑戦状だと思っている。

「オレの考えたこのトリックを解決してみろよ」

よーし、オレもいっちょ、この謎解いてみっかな。

という気にさせてくれる。

キャラクター紹介の描写の間もなく、冒頭10ページでいきなり起こる事件。

この事件の解決に、残りの350ページを費やすわけだが、

主人公は、一章では一切出てこない。

本格的に登場するのは、第二章から。

「探偵は遅れてやってくる」を地でいく。

この後はなんやかんやで事件の解決に向かっていくわけだけど、

一番お、って思ったポイントが、

探偵役の天馬君が、途中で盛大にトリックの解決を間違うシーン。

間違えた事に気づいた天馬君のキャラ変ぶりは、読んでて面白かった。

【トリック】

ミステリ小説で、トリックを自力で解いたことは、

一度もない僕だけど、

読んでいて、

事件の情景が想像できて、種明かしをされた時には

「なるほど!」

と、手をたたいて驚いたので、きっと良いトリックだったのだと思う。

適当でごめんなさい・・・。

でもミステリは好きだけど、トリックを解くことは、

諦めているものからすると、トリックの良しあしを語ることは

難しいです・・・。

【総評】

トリック自体が良いのか悪いのか、僕にはわからないけど、

この「体育館の殺人」、

推理編から解決編へと、切り替わる際に

作者からのメッセージがある。

個人的にこのメッセージだけで、90点を付けたくなった。

そんな昔ながらの王道ミステリーが大好きだった僕の

拙い書評だったとさ。

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